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#36 少額のM&A

「少額」の壁

M&Aや事業承継の案件を仲介したり、あるいは対象会社に助言を提供する会社が毎年増えている感覚があります。証券会社、銀行、大手のM&A仲介会社の他に、会計士/税理士の先生が参入されるケースや、IT系の企業がマッチングの効率化を掲げて参入されるケース、不動産業者が参入されるケースなど例を挙げるといくつも出てきます。また、仕事をしていて出会う仲介会社の方の中には、大手のM&A仲介会社から独立されて事業をされている方もちらほらいらっしゃいます。

 

すでにご存知の方も多いと思いますが、M&Aや事業承継に関連する事業を行っている企業(弊社を含みます)の収入は、主に以下の3つから成り立ちます。

 

①着手金や月額手数料

 案件に着手する際に、数百万円〜2,000万円くらいの金額をお支払いいただき、収入とするものです。また、毎月数十万円程度の月額活動手数料をお支払いいただき、収入とするケースもあります。

 

②中間金

 基本合意時に数百万円を中間金としてお支払いいただき、収入とするものです。

 

③成功報酬

 M&Aや事業承継の案件成就時(株式譲渡契約や事業譲渡契約等)に決められた料率で手数料をお支払いいただき、収入とするものです。(移動金額の5%や、移動総資産額の5%等。最低手数料500万円等の設定あり。)

 

弊社は③の成功報酬のみという手数料体系としているため、この手数料の金額のみが収入となっています。

 

ここまで手数料の話をすると、M&Aや事業承継における譲渡金額が少額の場合にぶつかる壁についてご理解いただけるものと思います。

譲渡金額が100万円なのに、手数料が500万円!?

ケーススタディをしてみましょう。

 

M&A/事業承継の案件として、小規模の小売事業者さんが少額での譲渡を希望していらっしゃったとします。

 

事業規模は大きくないものの、非常によい店舗の立地をもっていたため買い手さんと基本合意を行いもろもろの条件交渉を行った結果、株式の譲渡金額として100万円、そして金融機関の借入2,000万円の連帯保証から外れるという内容で取引が成立したと想定します。

 

以下に改めて条件を整理してみます。

 

(株式譲渡金額)100万円

(銀行借入)2,000万円

 

上の条件ともとに、例えば3つの手数料パターンを想定してみます(最手数料は500万円)。

 

(1)着手金+成功報酬(移動金額)

   着手金100万円、手数料総額は500万円。

 

   ※100万円×5%は5万円ですが、最低手数料が500万円のため手数料は500万円。なお着手金 

   は成功報酬の内金となるケースがあるため、支払い方としては着手時に100万円→成功報酬400万 

   円です。

 

(2)中間金+成功報酬(移動金額)

   中間金を100万円、手数料総額は500万円。

   

   ※計算式は(1)と同様。支払い方としては中間金100万円→成功報酬400万円です。

 

(3)成功報酬(移動金額)

   成功報酬として500万円。

 

 

譲られた方は100万円の株式譲渡代金を受け取る代わりに、M&A仲介会社に対して500万円の手数料を支払わなければなりません。

 

非常に特殊な事情がある場合を除き、このような少額のM&A/事業承継案件が経済的に成立しづらいことがイメージできるかと思います。

 

他方、最低報酬を100万円などに値引きした場合、M&A/事業承継の仲介会社は、他の案件で500万円以上を取得できる可能性がある案件に注力するため、相対的に案件として力を入れてもらえない可能性もあります。

 

経済的にネガティブなことを書いてきましたが、更にネガティブな話は続きます。

少額のM&A/事業承継案件はマッチングするのが大変!?

経験上ですが、案件としてマッチングしやすいものを上から並べてみます。(大企業の案件は弊社が対応していないため、中小企業以下について記載しています)

 

中小企業で、オーナー経営者がいなくても組織が自律自走している企業

中小企業で、オーナー経営者のもとで経営が安定している企業

中小企業で、オーナー経営者に問題があり事業が低迷している企業

小規模零細の事業(個人事業主も含む)で経営が安定

小規模零細の事業(個人事業主も含む)で業績が低迷

 

このような順番に並べることができます。買い手として考えたときに、M&A/事業承継にかかる事務コストは大小に関わらずあまり変わらないので、できるだけ規模があり、かつ安定した事業を好むことは理解していただけると思います。

 

また小規模であればあるほど、創業者やオーナーに顧客や従業員が密接であることがあり、創業者やオーナーの引退に伴って事業の基盤が一部剥落するようなリスクも十分に想定することができます。

では、どうするか。

すごくネガティブなことばかり書いてきましたが、弊社では少額の案件を何件も案件成就させてきました。

 

成就させたM&A/事業承継案件の最小金額は約150万円。

 

では弊社において、どのように対応しているのか。以下2点の考え方で対応しています。

 

①譲渡金額が10百万円未満の案件で、売り手から手数料はいただかない

 少額のM&A/事業承継案件においては、買い手からのみ手数料をいただく手数料体系を撮っています。譲渡金額が10百万円以上の案件については、売り手さんと手数料について柔軟に交渉を行い納得いただける手数料を個別に決定するようにしています。

 

②新規事業/小さく試したいにフォーカス

 買い手候補の選び方として、多角化を狙っているような企業へ主に提案を行っています。新規事業を行いたいけどリスクはできるだけ抑えたい、あるいは小さく試してみたいというニーズをもつ買い手企業を弊社でネットワークしており、そのネットワークから候補を選び少額のM&A/事業承継案件の成就を行っています。

難しい案件もある

弊社では少額のM&A/事業承継案件について積極的に相談にのり、案件成就に動いていますが、正直難しい案件もあります。

 

例えばですが・・・

・市場が大きく縮小し供給過剰になっている業界/事業

・設備産業(固定資産が大きい)で、更新や修繕がなされていない事業

 

というのは、正直難しい可能性があります。

 

まずはご相談いただけましたら、所感についてもお伝えできますので、こちらからご連絡いただけると幸いです。

 

また、「新規事業を小さく始めてみたい」という買い手企業さんからのご連絡もお待ちしておりますので、こちらからよろしくお願いいたします!