#33 廃業を検討する前に

消費増税、そして新型コロナウイルス

2019年の10月から実施された消費増税に対応するため、新しいシステムの導入やシステムの改修等を通じて投資が必要となった企業が多くあります。また、この投資に見合わないと判断し、このタイミングで廃業を決断された経営者の方が弊社の関与先にもありました。

 

この投資よりも経済を苦しめているのが、消費増税によって引き起こされたと考えるのが妥当な、景気の冷え込みです。個人消費が冷え込み、企業の新規設備投資が冷え込み、マクロとして景気後退が明らかになりました。

 

さらにここにきて追い打ちをかけてきたのが、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞です。営業をしなければ新しく資金の獲得はできませんし、その一方で家賃/人件費といったコストの支払いで資金が流出していきます。

 

このような事態から、弊社関与先でM&Aの最終的な交渉を行っていたにも関わらず、廃業を選択された企業が出始めました。

M&Aか、廃業か

弊社はM&Aの仲介や助言を生業としているため、弊社としてのポジションとしては「M&Aをやりましょう!」と言いたいところではありますが、そこは冷静に判断する必要があるものと考えています。なぜなら、あくまでM&Aは経営者にとってとりうる「手段のひとつ」であるからです。そのため、両者のメリット/デメリットをしっかりと把握し、それによりどの選択肢をとるのが最適か(もうひとつの選択肢は、「引き続き独力で経営を続けていく」というものです)、ご一考いただく材料となれば幸いです。

M&Aのメリット/デメリット

メリット


・事業を継続することができる。また組む相手によっては事業を発展させられる可能性がある。

 

・従業員の雇用を現状のまま維持できる可能性がある。

 

・取引先との継続的関係を維持できる可能性が高い。

 

・借入の連帯保証から外れることができる。

デメリット


・相手が見つかるまで時間を要する可能性がある。また、事業内容や経営状態によっては相手先が見つけられない可能性がある。

 

・M&A仲介会社/助言会社への手数料が発生する。

 

・実行のタイミングを経営者自身で決めることができない(相手ありきの話であるため)。

 

・M&A仲介会社/助言会社をしっかり選ばない場合、「譲渡を検討している」という情報が外部流出する可能性がある。


廃業のメリット/デメリット

メリット


・経営状態や資産の状態によっては、ある程度の資産をオーナーとして守れる可能性がある。

 

・実行のタイミングを経営者自身で決めることができる。

 

・倒産とは違い、廃業の場合は社会的な名誉を保つ事ができる。

デメリット


・清算後、借入が残る場合は代表者として保証債務を負う可能性がある。

 

・従業員の働き場所が失われる。

 

・取引先に対して適切な引き継ぎ先を見つけられない場合、迷惑や負担をかける可能性がある。

 

・急ぎの資産売却の場合、価格交渉で足もとを見られう可能性がある。


まとめ

M&Aと廃業について、主だったメリット/デメリットについて記載をしてきました。

 

M&Aは事業の継続や発展という大きなメリットがある一方で、相手ありきの話であるため経営者自身ですべての意思決定を行うことができず時間を要する可能性があるという大きなデメリットがあります。

 

廃業は経営者自身のタイミングをもってすべての意思決定を行うことができる(ただし資産売却が必要な場合には相手ありきのため時間を要する可能性があります)一方で、従業員や取引先に負担を強いる可能性があるというデメリットがあります。

 

このような経営環境下においては、早め早めに意思決定を行うことが求められます。廃業はいつでも経営者自身の判断で行うことができるため、その選択をセーフティネットとして留め置きながら、M&Aの可能性を模索するのが良いと私は考えています。

 

弊社はお問い合わせから、24時間以内(このような状況下のため、休みなく対応しております)にお返事しておりますので、少しでも意思決定のために材料集めをしたいという経営者の方がいらっしゃいましたら、こちらからお問い合わせいただけると幸いです。