#30 「買いたい」気持ちと「売りたい」気持ち

揺れ動く2つの気持ち

私は、会社を買いたい気持ちと会社を売りたいと思う気持ちは、表裏一体なものとであると考えています。特に、中小企業のM&A案件を担当しているとそのように思うことが多くあります。

 

最初は会社を買いたいというニーズを持っていた方が、ある日突然会社を売りたい、あるいは譲りたいという気持ちに変わることが中小規模のM&A案件においていくつか経験をしてきました。

 

結論から言えば、私が担当した案件の中で上手くいった(=お互いが幸せになる中小規模のM&A案件を創り上げることができた)と思う案件の全てが、このようなきっかけから始まります。

 

ではなぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

2つの気持ちの源は同じ!?

会社を買いたい気持ちと、会社を売りたいという気持ちが表裏一体になっていると理解しているのか解説をしていきます。

■まずは「売りたい」と思う気持ちの源から考えてみましょう。

 

私が中小規模のM&A案件を担当してきた中で、会社を売りたいと思う気持ちの源は大きく3つに分けられると考えています。

 

①事業承継

 これは後継者がいないため、会社を売りたい/譲りたいと思うタイプです。これから健全な企業であればあるほど、このようなニーズがあるM&Aの案件は増えていくものと考えています。

 

②業績不振

 これは足元の業績が不振、または今後不振になっていく可能性があるため、どこか資本力のあるところと組むことで再建を図っていきたいという狙いから生まれてくる案件です。M&Aの案件としては難易度が高い案件です。

 

③事業拡大

 これは自分の力だけでは事業の拡大が難しい、あるいは事業を創り出すことは得意だけれど安定成長には向いていないという自己判断から生まれてくる案件です。事業の成長と従業員の幸せを思い、さらなる成長のために大資本やあるいは事業シナジーが大きく見込まれる先と手を組んでいくというM&Aの案件です。

 

■次に、「買いたい」という気持ちの源を考えてみましょう。

 

私が中小規模のM&A案件を担当してきた中で、会社を買いたいと思う気持ちの源はただひとつ、「事業の成長」です。事業を成長させ、会社を大きくし社会や従業員にとってより多くの価値を提供する存在になっていくため、時間・市場を買うM&Aを行っていきます。

 

さてでは、なぜ事業の成長をさせたいと思うのでしょうか?

 

事業成長を目論む気持ちは、オーナーによって様々です。新しいことに挑戦したいという思いから多角化を狙う、業界再編の核となって事業を成長させ規模の利益を追求したいという思いから垂直/水平統合を狙う、自尊心を満たすために会社規模の拡大を狙う、縮小・統合していく市場の中で生き残りを狙う、等々様々な思いがあります。

 

このような思いの中から、私が目をつけるのは、「業界再編の核となって事業を成長させ規模の利益を追求したいという気持ち」と「縮小・統合していく市場の中で生き残りたいという気持ち」の2つです。

 

この2つの気持ちに目をむける理由は、必ずしもオーナー自身がその中心にいる必要がなく、中心となるメンバーとなることができれば気持ちが満たされる可能性があると考えるからです。

 

そしてこの2つの気持ちこそが、会社を売りたい/譲りたいという気持ちに変わり、売りたいと思う気持ちの①事業承継と③事業拡大につながっていく可能性をもっています。

 

ですから、会社を売りたい/譲りたいという気持ちと、会社を買いたいという気持ちの源が一緒になることがあると考えています。

なぜ、このタイプのM&A案件が上手くいくのか

最後に、会社を買いたいという気持ちが、会社を売りたい/譲りたいという気持ちに変わった案件が上手くいった(=お互いがハッピーでいられる)実績になっているのかについて考えます。

 

今まで携わった中小規模のM&A案件において私がもっている仮説はただひとつ、「お互いに向いている方向性が一緒だから」というものです。

 

お互いが事業を成長させていくことに合意し進めていくからこそ、意見が割れたときでもじっくり議論し最良と考えうる方法をとっていくことができ、それが結果としてお互いが納得いくハッピーな案件につながっているのではないかと考えています。

 

ただし、ここには一つの大きな前提があります。

 

それは、決して50:50のような意思決定形態や、たすき掛け人事のようなことはしないことです。決めるべきところは決める。ただし、そこにたどり着くまでにじっくり議論をする土壌(文化)を用意しておくことが肝要です。

 

私どもはまず、じっくりオーナーの話を伺うところからスタートします。会社を買いたい/売りたい(譲りたい)という気持ちの有無は別として、将来的に活用を検討している方とじっくり話をすることで、実際に活用できる可能性を探っていきます。

 

M&Aの可能性を検討してみたい場合、ぜひこちらからお問い合わせください。M&Aに関するお問い合わせは、必ず24時間以内にお返事しております。