#9 自社の強みとは何か

自社の強みを挙げてみよう、自社の強みについて考えてみよう。こういう会話は、事業戦略を考える立場でなくとも、1ヶ月に一度はされているのではないかと思います。今回は、この「強み」の正体について考えていきます。

強みの種類はわずか2種類?

僕は学者や研究者という立場ではありません。あくまで現場をみていて感じることとして、いわゆる「強み」には2種類しかないのではないかと考えています。ここでいう2種類とは・・・


①競合上の相対的な強み


②代替性がない、切替コストが莫大にかかるゆえの強み


この2種類に集約されるのではないかと考えています。それぞれについて、少し深く考えてみましょう。

競合上の相対的な強み

これが、多くの方が認識している強みだと思います。競合となる複数の他者がいて、そういった他者とどういった「差」を出せるのか?あるいはどういった「差」があるのか?という点から考えだされる強みになります。


この強みの源泉は、価格かもしれませんし、利便性かもしれませんし、デザインかもしれません。自社には強みがないという考えに至るのも、こういったありふれた切り口で考えるからこそ強みが見つからないということがあります。


競合上の相対的な強みは市場のシェアによって決せられる所があります。なぜなら、価格や知名度、利便性といった切り口で考える際には、市場でのシェアがモノをいう可能性が極めて高いと考えるからです。このような市場に殴りこむ場合には、全体を攻撃しても勝てる可能性はほぼ無いと考えて差し支えありません。ではどうやって勝ちにいくのか。それは、狙う場所を明確にし(=誰を狙わないかも明確にし)、そこにゲリラ戦を仕掛けていくわけです。全体では勝てないかもしれませんが、市場のごく一部だけでもしっかりと握ることができれば、そこにおいては相対的な強みを持つことができます。


強みがない、強みを見つけられない。そう困っている時は、思い切って自分が得意としているところだけにギュッと的を絞って見るということが1つの打開策になることがあります。

代替性がない、切替コストが莫大にかかるゆえの強み

自社の商品(あるいはサービス)がある日突然なくなった時に、困って途方にくれてしまう人がいますか?


この質問に対して、どんな顧客が困り果てるのかを明確に整理することができる場合、その会社は代替性がないことに由来する強みをもっています。これはもう相対的ではなく、その会社「独自の強み」と表現することができます。こういった会社は、その強みの源泉をよく理解し、それを維持/深耕していく必要があります。


なぜ自社の商品が顧客に受け入れらてているのか?どういった顧客に受け入れられているのか?顧客が感じている価値や顧客が受け取っているメッセージやイメージは何か?他社が参入できない理由はなにか?などなど。自社がこの強みを持てている源泉(理由)について様々な角度から問いかけを行い、ボヤッとしている強みを浮き彫りにしていきます。その上で、その強みをより強くする方向性や、その強みを他分野に展開するという方向性で検討を行きます。


他方、切替コストが莫大にかかるというものも「独自の強み」ということができると考えています。切替コストは、実際にかかる費用としてのコストと、信頼性などを背景とした心理的なコストの2つに分解されます。


実際にかかる費用としてのコストは、商品を売り切るだけではなくその後の保守についても請負い、保守を打ち切ることによって何らかの違約金等がかかるような場合を想定しています。また心理的なコストとは、長年安定的に事故なく運用してきたシステムを、初めて取引するような会社に切り替えるような際に発生します。すなわち、「今までのシステムは信頼をしてきたけれども、新しいシステムは事故なく動いてくれるかどうか不安だ。だから、信頼性というものを重視して今までのシステム会社にお願いしよう」というようなケースを想定しています。金額という経済的条件ではなく、長年の信頼ともし事故が起こったら大変だという心理的にマイナス方向へ見積もるコストによって他社を寄せ付けずに勝負に勝てるような強みがここにはあります。

どちらの強みで勝負する?

ざっくりと強みを2種類に分けて見てきました。どちらが良い/悪いという話ではなく、自社がどういった競争環境にあるのか?ということを今一度冷静に振返り、その中から「強み」を見つけ、あるいは浮き彫りにして戦いに勝つための方向性を考えて行くことが必要です。


ぜひ今一度、自社の商品(あるいはサービス)の「強み」は何か。再考するキッカケにしていただけると幸いです。