#7 誰に事業を承継するのか

必ず訪れる事業承継

 会社は継続を前提として設計された仕組みですが、それを経営する経営者やその会社を所有する株主が人間であれば、必ず終わりがやってきます。つまり、どんな会社であれ必ず事業承継を行う機会は訪れます。そこで問題になるのが、「誰に」「いつ」「どうやって」事業を承継するか?ということです。今回はこの中でも「誰に」という点について考えていきます。

3タイプの承継者

 「誰に」事業承継を行うか、まずは大きく3つのタイプについて列挙します。


1)親族


 親族は事業承継を行う中で真っ先に挙げられる選択肢のひとつです。小さな頃から経営者の背中を見て育ち、経営や会社についてたくさんの学びを得てきていますし、親族への事業承継はメリットが大きいと考えられます。しかし、そもそも会社を継ぐ意志がない場合、会社を任せるのには心もとない場合、そして明らかに事業を行っていく方向性が違う場合などは他の選択肢について考えていく必要があります。私たちに対して、「関係が近すぎるがゆえに、言えないことや気になることもあって・・・」という相談が持ち込まれま。


2)従業員や経営陣経営陣


 従業員や経営陣は長年会社に貢献し、事業を実際に動かしてきた方々です。もしかすると、オーナー経営者よりも会社の隅々まで把握している方がいるかもしれません。従業員や経営陣に事業を引き継ぐメリットは、混乱が少なく安定した事業運営を継続できる点や、会社がそれぞれ持つ文化を引き継いでいけることにあります。しかし、一方では前経営者の顔色を伺いながら(場合によっては、横槍が入ることさえありますが。。。)手枷足枷経営に陥る場合や、オーナーの株式を買い取るそれなりに纏まったお金が必要になるということもあります。私たちに対して、「株を買い取る資金をどうやって調達したらよいのか・・・」という相談が持ち込まれます。


3)第三者


 第三者というのは誰もが想像するM&AやIPOが行われる場面です。同業種の会社であったり、近接する事業を行っている会社、ファンド、あるいはIPOをして社会が経営を支えるといった選択肢が中に含まれています。第三者が事業を引き継ぐメリットは、相手の会社が安定している会社であれば継続的な成長を実現できる可能性が高まるということにあります。自分の会社では持ち得なかった資源(ひと、もの、かね)などを相互利用することで、事業の安定継続や成長を実現し、従業員の安定雇用などにつながっていく可能性があります。しかし、対象となる第三者の企業文化とうまくすりあわなかった場合、事業が劣化していく可能性もあります(例えば、会社の方針と合わないために大量退職が起こるといったケースもあります。)。第三者への承継をうまく進めソフトランディングさせるためには、相手の経営者の考え方ややり方に「共感できるかどうか」がポイントとなってきます。私たちに対して「譲渡したい」という相談で持ち込まれるものもありますが、私たちが大切にしている経営者は私たちが行う事業譲渡の仮説提案に対して「具体的な提案があれば検討することは、やぶさかでない」という方々です。様々な思いや揺れ動く感情がある中で、最善の可能性を求めて様々な選択肢を検討する経営者を私たちはサポートし、「つづいていくをデザイン」しています。


興味深いデータ

 中小企業庁が委託した「中小企業者への経営実態及び事業承継に関するアンケート調査(2013年12月)」というものがあります。その中に「社外の第三者への事業承継を検討するか?」という質問があり、とても興味深いデータが以下です。

 5人のうち2人以上の経営者は「社外の第三者への事業承継を検討する」と答えているデータです。今までは親族内継承でうまくやれてきたのだけれども、そもそもお子さんがいない、あるいはお子さん自身が継承を拒否していることもあるでしょう。さらには、劇的に変化していくこの経営環境に柔軟に対応し生き残っていくためには第三者とでもスクラムを組むことも選択肢として考えなくてはという「外部からの強い圧力」もあると、私たちのところに寄せられる相談内容から推察しています。第三者への事業承継を検討する際には、具体的な事例を用意して検討を行うことが必要であり、そういった場面で私たちは経営者の方々とじっくり対話を行いながら頭の体操を行い、思考を深くしていくお手伝いをしています。

まとめ

 必ず訪れる事業承継の「誰に」に該当する大きな選択肢は3つです(中には、承継しないで廃業を選ぶという方がいるかもしれませんが・・・)。


私たちはどの選択肢が良いのかを考える作業から「対話の相手」として経営者の方々と関係を持つようにしています。その対話を通じて思考を深め、様々な材料を用意して慎重に検討を行い、必ず訪れる事業承継という「大決断」をしていただければと考えています。


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